曽木発電所遺構

鹿児島県

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紅葉が舞い散る春風が、鹿児島県伊佐市に佇む「曽木の滝」を優美に彩っている。
その1.5キロメートル下流に、明治の面影を色濃く残す「旧曽木発電所遺構」が懐かしい光景を刻み込んでいる。

この発電所は1909年、名だたる日窒コンツェルンの創始者である野口遵氏によって建設されたものだ。
彼の熱き志と共に、水俣市の化学工場に電力を供給するという大志が胸に宿り、曽木の滝の美しさと力強さを利用した水力発電所が誕生したのである。

当時、鹿児島県内で唯一の明治期の建造物として知られるこの煉瓦建築物は、歴史を背負いながらも、時を超えて今もその存在感を放っている。
しかし、激動の戦後、チッソ水俣工場への電力供給を果たすものの、1965年の鶴田ダムの完成とともに、優雅な姿は水に姿を消した。

だが、後に国の登録有形文化財に登録され、近代化産業遺産にも認定され、2004年には補修工事が行われた。
この補修作業には地元の人々や愛する旅行者たちも「レンガサポーター」として名前を刻み、思いを込めて参加したのだという。

春が訪れると、旧曽木発電所遺構はやわらかな光を放ち始め、9月までダムが洪水調節のために水位を下げるおかげでその美しい姿を見ることができる。
特に6月には、その趣深き佇まいを最も鮮やかに披露すると言われている。

さらに、周囲には見どころが満載だ。曽木の滝自体は高さ12メートル、幅210メートルの壮大な姿を誇り、「東洋のナイアガラ」として讃えられてきた。春にはサクラとツツジが彩を添え、秋にはモミジが色づく光景は、まさに詩情豊かだ。

展望所には柳原白蓮が昭和32年に滝を訪れた際に詠んだ歌碑が立ち、文学の粋を感じさせる。
園内には曽木発電所の地下道を利用して作られた「曽木の滝洞窟きのこ園」も存在し、訪れる人々を楽しませている。

だが、豪雨の影響で令和3年7月10日に一部倒壊が生じたという。
しかし、地域の人々や観光客はこの貴重な遺産を失うわけにはいかない。保存活用への取り組みが続けられ、遺構は今も地域の宝として輝き続けることだろう。

明治の時代を偲ぶ旧曽木発電所遺構は、歴史的な遺産として誇り高く、時を超えて美を纏いながら、多くの人々の心を魅了している。
鹿児島の一角に佇むこの古き良き建築物は、物語のような魅力を持っており、今もなお地域の宝として愛され続けているのである。

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