北山川~瀞ホテル

三重県

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北山川

北山川、その名の謳歌は奈良県南部の隅々まで響き渡る。その流れは深遠で、源は大台ヶ原から湧き出て、奈良県、三重県、そして和歌山県の飛地を繊細に彩りながら、最終的に和歌山県新宮市で熊野川と恍惚と交わる。その後、清らかな流れは熊野灘へと流れ込む。

北山川の源流域、それは大台ヶ原、日本でも最も多雨で壮麗な地域だ。上流部は吉野熊野国立公園の一部として、豪雨と急流が作り上げた深い渓谷が連続する。この渓谷は瀞峡と呼ばれ、下流部の瀞八丁は、その美しさから国の特別名勝および天然記念物として認められている。その地形は、隆起準平原である大台ヶ原から始まる流れが、豊かな雨と水成岩の儚さが交わり、台地を侵食して生み出されたものだ。断崖絶壁が屏風のように立ちはだかり、それは険しい地形だが、そのせいで人々の生活は河畔に限られ、原生の常緑広葉樹林が色鮮やかにそのまま残されている。

かつて、上流部では林業が栄えていた。だがその地形は急で、伐採された木々を陸路で搬出することは難しかった。そこで誕生したのが「筏流し」。伐採された木材で筏を組み、それを水流に乗せて下流へと送り出す、その独特の方法だ。筏流しで運ばれた木材は、本流へとまるでダンスを踏むかのように流れ、新宮市の河口で集められ、出荷された。

しかし、ダム建設による水量の変動、そして林業そのものの衰退。筏流しは1964年に一度は終焉を迎えた。だが、その15年後、観光目的で復活し、今日では北山村の名物として親しまれている。

私が瀞峡を訪れたとき、勝手神社前付近の川面はウユニ塩湖を思わせる鏡面のようだった。光を反射する水面はまるで魔法をかけられたように美しく、その景色は永遠に心に刻まれることだろう。

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瀞ホテル

恍惚の瀞峡に聳え立つ瀞ホテルは、水面から約15mの高みに佇んでいる。その歴史は大正時代から昭和戦前までさかのぼると伝えられている。昔は”あづまや”と呼ばれ、かの筏師たちの宿として栄えていた由緒ある宿である。

時が流れ、昭和初期には現在の名前である瀞ホテルとして、旅館として営業していたが、平成16年にその扉を閉ざした。しかしその後、再びカフェとして蘇った瀞ホテルは、レトロな雰囲気と現代の洗練が絶妙に融合した独特の空間を持ち、多くの人々の心を魅了している。

瀞ホテルからはウォータージェット船と称されるクルーズ船の舞台を望むことができる。この船は2つの乗り場から利用可能であり、瀞峡を魅惑的に周遊することができるのだ。ぜひともその船旅を踏み入れることをお勧めしたい。

志古(瀞峡めぐりの里 熊野川)から乗船する場合、船旅の時間は約2時間に及ぶ。乗り場にはお土産屋やレストランが立ち並び、退屈することなく待つことができるだろう。ウォータージェット船は1時間に1本のペースで出航しているが、最終便は早いので、なるべく早めに足を運ぶことをお忘れなく。

また、瀞ホテルの二階からは、壮大な眺めを堪能できる半個室のお部屋が用意されている。一日に二組の幸運な客だけが利用できる、終日貸切の特別な空間。家族連れでもゆったりとしたひとときを楽しむことができるのだ。瀞の時を心ゆくまで愉しんでほしい。

そして、瀞ホテルの周囲には、身も心も自然と歴史を感じることのできるアクティビティがある。家族や友人との楽しさもよし、独りでじっくりと過ごすのもよし。カナディアンカヌーやサップ、釣り、かつての集落の跡地散策など、かけがえのない思い出になること請け合いだ。

さらに、瀞ホテルから徒歩10分ほどの上流には山彦橋(やまびこばし)が架かっている。この吊り橋を渡れば、対岸には三重県が広がる。橋の上からは、瀞峡の絶景や観光船を一望できる。この吊り橋は、かつて仮面ライダーの舞台としても脚光を浴びたことでも有名である。

以上のように、絶景瀞峡に佇む瀞ホテルとその周辺は、官能的な魅力に満ちた場所である。豊かな自然と歴史が織り成す素晴らしい体験を、心ゆくまで堪能してほしい。

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