奥出雲おろち号は、神話に彩られた奥出雲を縦断する木次線の列車である。車窓に窓はなく、四季折々の風景を直に愛でることができる。枝が車体に触れ、葉っぱが舞い降りるその瞬間は、自然と一体となった喜びを感じる。これぞまさに奥出雲おろち号ならではの魅力である。
松本清張の名作「砂の器」の舞台、亀嵩駅や稲田姫像、美しい社殿造りの出雲横田駅、そして奥出雲そばの本場八川を通り過ぎ、出雲坂根駅に到着する。そこで湧き出る伝説の「延命水」には、多くの旅人が生命の源を見出す。
列車は二重ループ「奥出雲おろちループ」を越え、真っ赤な三井野大橋を渡る。風景はまさに絶景の連続であり、魂を揺さぶるような美しさだ。
しかし、悲しいことに奥出雲おろち号は老朽化のため、今年度で運行を終える運命にある。だが心配は無用だ。新たな時代を迎えるために、「あめつち」がその跡を継ぎ、来年度以降、木次線を駆け抜ける計画が進行中なのだ。
奥出雲おろち号の記憶は深く刻まれ、これからも新たな列車が続々と誕生する。その先に待つのは、より魅力的な旅の物語。その思いは受け継がれていくであろう。
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